
去年、暴漢に襲われた宮台真司は学者にしては珍しく、自らをナンパ師と呼んで、
ナンパについての言論も多く残している。例えばインタビューで言っていたのは、
「かつては路上で女と目が合っていた。だからナンパできた。しかし今の時代は、
誰とも目が合わない、内向の時代だ。」とか、「かつての渋谷は熱気があった。」
などの過去のほうがナンパ全盛時代だったということ。これは全くの事実だろう。
そこで一体、どんな社会変化が起こってきたのか?をザックリと振りかえりたい。
かなり大まかではあるが、以下、コミュニケーションツールの変化による五段階。
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第一世代(80年代):家電(いえでん)時代まだ携帯もネットもない時代、家にある固定電話だけが頼りだった。女が実家なら、
お父さんが電話に出てしまうし、不在の場合は留守電に吹き込んだりと、なかなか、
すれ違いも多く大変だったが、バブル景気で街は熱気に溢れ、ナンパは盛んだった。
第二世代(90年代):携帯(けいたい)時代ついに携帯電話が登場し、女の個別の番号を聞けるようになった。援助交際などが、
ブームになったのも、この個別の連絡先が解放されたからで、当然ながらナンパも、
より盛んになる。例の宮台真司の言う「渋谷の熱気」も、この第二世代の街の活況。
第三世代(00年代):ネット時代ゼロ年代も同様に、まだ携帯電話はガラケー時代が続いたが、今度はADSLなど、
速いインターネットが始まり、ナンパの関連情報がドッと入ってくるようになった。
そうして遊び人だけでなく、内向的な男達もナンパするようになり、裾野が広がる。
第四世代(10年代):スマホ時代スマホの登場によってSNSが盛り上がり、LINEだけでなく、お互いのSNSを
フォローしたりと、連絡先を聞くのが過去最大に楽になった。だがマッチングアプリ
も充実しまくり、路上ナンパからネット上の出会いへと、メインがシフトしていった。
第五世代(20年代):マスク時代まさかのコロナ騒動が起こり、みんながマスクをするようになり、感染対策と称して、
他者を避けるようになった。まさにナンパの歴史上、最悪の状況が続いた。今現在は、
だいぶ緩和され、マスクも不要になるのだが、コロナのトラウマは残り続けるだろう。
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以上が大まかに10年ごとに区切ったナンパの5つの時代だが、これを読んでる人は、
けっこうベテランも多く、第三世代から3つの時代をまたがっている人も多いはずだ。
そして宮台真司のように第二世代を経験している人が、新しい時代をつまらなく感じ、
昔は良かったと思うように、マスク時代の前を知っている者にとっては、現在のこの、
マスクの第五世代は、あまりに味気なく、やりづらく思う。しかし、それは本当かな?
ほんの少しでも純粋な目で見つめ、一歩だけでも前進してみると、そこにはいまだない
新しい世界が広がっている。確かにマスク時代は最悪だ。喋りづらく、顔も見えない。
しかもワイヤレスイヤホンまで付けて、耳までふさいで、多くが内向している時代だ。
そして、かつてない程、多くが他者の目を気にしている。SNSの発達は大勢と気軽
につながれる楽しさだけではなく、他者から批判される恐怖も同時に育ててしまった。
要するに、他者と比べてばかりで自信を失くす者ばかりで、いわゆる呪われた世代だ。
つまりマスクというのは「抑圧」の象徴であり、これまでのウミが可視化されたのが、
コロナ騒動だった。ハッキリいって、こんなに面白い時代は他にはない。自他ともに、
かけられた呪いを解き、自由になっていく大冒険である。これを「和術廻戦」と呼ぶ。